SAPPORO CITY HACK 第1回レポート〜ズームイン企画を振り返ってみよう〜

2022年3月22日に開催した、未完Project主催「SAPPORO CITY HACK」のイベントレポート第2弾となる今回の記事は、SAPPORO CITY HACKで用意されているズームイン企画のイベントレポートです!

現役エンジニアのお二人にテーマである課題やプロダクト開発について深掘りしていき、課題ドリブンな開発を進める上での心構えを伺ってきました。

SAPPORO CITY HACK にて審査員も務めていただいたお二人にハッカソンに参加したと仮定して、どのように課題を捉えてプロダクトに落とし込むかという視点に基づいていくつかご質問をさせていただきました!

今回のイベントレポートではインタビュー形式で内容をまとめています。

ー課題をもとにプロダクト開発を進める際に、お二人が最初に着手する点はどこになりますか?

松井さん

やっぱりまずは、多くの人の声を聴くことですね。

特に今回の雪みたいな課題ってみんな悩んでるじゃないですか。

なので自分だけの課題というか、独りよがりな感じで課題に取り組んで早い人はプロダクトをつくったりすると思うんですけど、まずは先に多くの人の声を聴くというのが大事だと思います。

後大事なのは、私自身ももともとプログラマーで、最初から技術をつかってついつい解決しがちになるんですけど元技術者としていうとそれはよくなくて、技術が先行してはいけないなと思ったりはしますね。

例えばですけどVRで解決しよう!みたいなのは難しいですし、変な方向にプロダクトが行きがちですよね。

エンジニアリングは手段の一つでしかないので、多くの人の声を聴いて一回技術とかを忘れて手段としてのエンジニアリングとして提供していくような形で取り組んでいくことが多いですね。

ー松井さんであれば、情報を集めてまずはどんな課題があるかを探るところからはじめるということですね。

松井さん

そうですね。多方面から話を聞いて、課題面さえ定義できればそこからはもうレールに乗るという感じです。

ーありがとうございます。林さんはシビックテックなどの取組に参加されることも多いと思いますが、そういう知見も踏まえてどんな点から着手されますか? 

林さん

そうですね、プロジェクトマネージャ、プロダクトマネージャ的に一番考えることとしては実現性っていうことかなと思います。先ほどの松井さんのお話にもありましたが我々技術者とかICT札幌とか看板を掲げている人は、どうしてもAIや技術を使って何とかしようという視点から入る事があるんですが、実際今年の大雪でICTが解決できた場面はどれほどあったかなというのが前提としてあると思います。実際には人員が足りなかったり、予測ができていなかったり、AIや技術以前の問題なのではないかというのを踏まえると、実際にプロダクトを開発するときはIT技術者がITの力をフルに使うよりも、逆引き的に「これを実現するには何が必要なのか」を考えていくことが大事だと思います。私たちが考える技術は万能じゃないので、効率化のために機械が得意な単純作業の繰り返しをICT化するといったことをうまく理解したうえで開発・行動に移していくことがいいんじゃないかなといつも思っています。

そういう意味では、今年みたいな大雪があったとき何も太刀打ちができなかったICT札幌としてはもっとやるべきことがあったのではないかという視点で議論をしていくことをもうすこしやってきても良かったんじゃないかなと思っています。

ーお二方の共通点として現実の課題みたいなものをもう少しとらえよう、技術ありきではなくてそこを見たうえで技術が得意な領域と得意じゃない領域があるということ踏まえることが大事なのかなと感じました。課題解決を全てのプロダクトでまかなえるわけではないとはよく言われていますが、その中でも課題解決にITが貢献できる具体的な領域はありますか?また、どんな課題領域であれば技術が活きると考えていますか?

松井さん

ケースバイケースというか、課題のモノによってはICTで太刀打ちできないことが多いですね。例えば物理で押してくる、例えば雪みたいな重たいものをICTでよけることは難しいですよね。もっと論理めいたものや情報・メディアに対してはやっぱりICTが強いところはあると思います。

北海道が抱えている課題は結構物理的なものが多い気がするのでそういう意味では難しいところがありつつ、私は技術者なので、技術が先行するアプローチするのは嫌いじゃないですね。SAPPORO CITY HACK みたいになんでも技術からアプローチしようぜみたいな考えは嫌いじゃないですね。われわれのすべきことはそこだとも思いますので。

ー知らない人に情報を伝えようというプロダクトが今回のハッカソンでは多かったと思うのですが、そういう点で情報・ソフトウェア領域でのアプリケーションを多く出しているクリプトン・フューチャー・メディアさんとして、現実のハードな課題が増えていく中どれくらい刺していけるか、どんなふうに現場で実装しようとしていますか?

林さん

そうですね、いかにみんなに知ってもらうかという機会を作るということでは、われわれもボケっとしていると追い越されてしまうっていう。少しずつ頑張ってきたことでもありますね。開発していることや取り組んでいることって、実現したことで満足してしまいがちですが、それを世の中に伝えるっていうことも重要なんですね。

代表の伊藤(クリプトンフューチャーメディア株式会社 代表取締役)もよくいうんですけど、ハコ(会社や組織、団体)の中でどれだけいいものを作っても、頑張ってきたことも含めて外に公開しないと、世の中に知れ渡らないっていうこともあるので。

自分たちが進めてきたことをどう公開してやってきたことを知ってもらうかが大事です。

今は公開することも当たり前の時代になってきているのでいかに発見されやすくするか、埋もれないようにすることも大事になってきます。

古い情報でも有益な有力な好意を持ってもらえるような情報であれば、発見の仕方、しくみづくりによって発見してもらえるので、クリプトン・フューチャー・メディアではその分野に取り組んでいます。 

音楽コンテンツも同じで、プロの方もアマの方も同じ土俵のYouTubeで発信することができますよね。ただ、どんなにいい曲でもプロモーションがうまくいってないと、曲としてはよくても埋もれてしまう現実がある。そういった既存のコンテンツを再発見させるプロダクトを作ってもそれが一つのプロダクトとして世の中に認知されるのではないかなと思ってます。

ー特に街の課題や災害の課題は情報自体はオープンデータという形で数多く公開されていますが、それをどう技術で届けていくかが今後技術で取り組める部分ということですよね

林さん

そうですね、実際に情報を得るためには普段みんなが使っている情報ツールがいいと思います。私の父と母も70歳を超えるんですが、普通にLINEを使っているんですよね。

高齢者がスマホ、LINE使えないよねって数年前に言われていたかもしれませんが私のおばあちゃんでも90歳を超えているんですけどLINEでよくメッセージを送っているんですよね。意外と使っている人も多いので、身近な使い慣れたツールで情報を届けるって言うのはぜんぜんありなんじゃないかなって思います

ーエンジニアとしてのお二人にお伺いしたいのですが、エンジニアが盛り上がって楽しく作れる形でプロダクトを実装したいとなったときどう進めていくのがいいでしょうか?

松井さん

エンジニアのモチベーションの維持も大変だし作りたい気持ちも分かります。

ただ真面目に黒字化するプロダクトを作るときはスモールから始めないと結局エンジニアが高単価なので、ビジネスとしてやる分にはあっという間に赤字になって、売れても取り戻せないということになりがちなので、エンジニアに好き放題させて技術から入るのはやめたほうがいいですね。

むしろどちらかというと、エンジニアの中にも課題解決に興味がある方や、何かのために技術を使いたいという方も中にはいるので、逆にそういうマインドやカルチャーを説明したうえでプロジェクトを進めていくことが大事ですね。

エンジニアを偏った目でみない、意外とエンジニアもいろんなタイプもいるのでそういったカルチャーにしていくのがいいのかなと思います。

ープロジェクトのマネージャー的なところでいくとエンジニア側もプロダクトを作っていて楽しくなるようなプロジェクト進行でかつ黒字化させようとするとどんな進め方をしていくのが良いでしょうか?

林さん

非常に難しい質問なのですが、、、私たちはもともと採算を求めて、一儲けしようということからプロダクトを作ろうとはしていなくて、いかに世の中に作っている人が多いのかを検討して開発に進むので需要が低いところからコストアウトしていきますね、、、

初音ミクはどうだったかというと、VOCALOIDに関してはそれなりにそこそこ売れたんですが最初はキャラクターとして売るつもりはなく、最初はボーカルの代わりに歌ってくれる音声ソフトウェアという意味合いのほうが強かったんですね。たとえば音楽をやっているとボーカルを集めるのが大変で、ドラマーが3人が集まることもあって、、女の子に歌ってもらいたいという希望もあったりして、そういった意味で歌を歌わせるという機能が求められていた感じです。

シーンに応じてライセンス事業を始めてみたり、海外でもコンサート事業が出来ていたり。なので、ゴールを設定しているというよりも、目の前の求められそうな課題に向かって粛々と開発してきた感じです。

こうしたいという願望から始めたプロダクトもあるので開発をしたけど回収できなかった、なんてこともあります。開発したという実績も生まれますし、それの何がだめだったのかというフィードバックや経験を活かしてプロダクトを展開していくことも大事ですよね。

ー最後にお二人にお伺いしたいのですが、多くの人に使われる良いプロダクトの条件は何だと思いますか?今後の開発に活かせるようなアドバイスをお願いします!

松井さん

求められるプロダクトの考え方ですかね、いろんなやり方があると思うんですがまずは大きな課題から考えていって、その中で完璧主義にならずその中でごくごく一部の課題を解決しようみたいなアプローチでやるのが好きですね。

それが現実に課題を解決できて、開発が可能で、見つけやすくて共感を得やすいみたいなのはありますが。私はそういう形が好きですね

林さん

これもちょっと賛否両論があると思うんですけど、当社がやってきたことや自分が取り組んできたことを踏まえての回答ですが、周りから求められることがすごく重要だと思っています。それが需要になるので、供給しても人がついてこないというのが前提としてあると思うんですが、更に企業なり団体なりチームなり自分なり、好きなものがあると思うんですよね。音楽が好きとか映画が好きとか、お金が好きとか、いろんな「好き」があるとおもうんですよね。

どんな仕事でもプロダクトを開発するって大変なんですよね。

ずっとモチベーションを維持し続けるのは大変ですし、やりたくないことをやっても開発がノってこないんですよね。「好き」なことを通して開発やプロダクトに関わることも大切だと思うんですよね。需要もすごい大切なんですけど、自分は何がやりたいかを考えながら進めていくことが大事だと思います。

あとは、中のメンバーだけで話を進めていると間違えて事が進んでしまうケースもあると思います。そういうときは賛否両論あると思いますが、外の意見を取り入れながら自分が発信できる自信みたいなのがあれば好きなものを突き詰めて課題のプロダクト・サービス化を進める方法も一つなのかなと思っています。