SAPPORO CITY HACK 第1回 イベントレポート~発表を振り返ってみよう〜

はじめに

未完Projectでは、3月12日から22日までの11日間、 〈第1回 SAPPORO CITY HACK〉をオンラインで開催しました.。本イベントは、北海道の社会課題を解決することを目的としたハッカソンプロジェクト、〈HOKKAIDO CITY HACK PROJECT〉の第一弾として開催し、今回は「雪国特有の課題を解決」をテーマに掲げて開催しました。

参加した9名は3チームに分かれ、冬ならではの課題を解決できるようなプロダクトの開発に熱心に取り組んでいました。中学生から大学生まで参加し、学校や学年、技術スタックを問わず、チームで連携している姿が見られ、新たな交流もできたのではないでしょうか。また、最終日には、ゲストのお二方から、発表したプロダクトへのフィードバックと、どのようにして社会課題と向き合われているのかをお話しいただきました。実際に第一線でご活躍されているエンジニアの方がどのように社会課題に向き合われているのかを知る、貴重な機会になりました。

また、各チームで取り組む課題は、『札幌市冬のみちづくりプラン2018』を参考に設定しました。ハッカソンを開催するにあたり、札幌市の雪対策の現状について行政の方に取材させていただいた内容もこちらで記事として公開しています。

〈第1回 SAPPORO CITY HACK〉は、11日間を6つのフェーズに分けて開催しました。

イントロダクション:3月12日(土)

アイデアソン:3月13日(日)~ 3月15日(火)

中間アイデア報告会:3月16日(水)

開発期間:3月17日(木)~3月21日(月)

最終発表:3月22日(火)

ズームイン:3月22日(火)

今回の記事では、最終日の22日に行われた最終発表会・ゲストのお二方による各チームへのフィードバックを振り返っていきたいと思います!

ゲスト紹介

株式会社インフィニットループ 代表取締役社長

松井 健太郎 さん

1977年生まれ。

2004年にケータイプログラマのための技術情報サイトke-tai.orgを立ち上げる。

2007年に株式会社インフィニットループを設立。

現在はスマートフォン向けゲームやブラウザゲーム開発を行う。

2018年にVR開発を専門とした、株式会社バーチャルキャストを設立。

◇クリプトン・フューチャー・メディア株式会社 システムチームマネージャー

林 禎康 さん

2002年、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社に入社。

現在は、新規事業プロジェクトなどのシステムマネジメントに従事。

その他、札幌移住計画、北海道オープンデータ推進協議会、北海道IT推進協議会などの団体へ参加。

各チームの発表とフィードバック

今回の〈第1回 SAPPORO CITY HACK〉では、雪に関して5つの課題を設け、エントリー時にとった希望をもとにチームを組み、開発に取り組みました。

5つの課題は以下の通りです。

今回は、2チームの発表を振り返っていきたいと思います。

それでは早速見ていきましょう!

(※発表順/課題/プロダクト名/チーム名)


1. 課題2 /「yukiguni-go」/ トライアングルストラテジー

◇発表

このチームに割り当てられた課題は、「2:家の周りにたまる雪の処理 / 除雪の効率化」です。公開されている統計などから、除雪時の事故による高齢者の犠牲に着目し、「雪かき中に発生する事故を防ぐ」をテーマにしたプロダクト、「yukiguni-go」を開発しました。

バイタルサイン(心拍数など)を測定できるFitbitと連携することも可能なLINE公式アカウント「yukiguni-go」に、雪かきをする本人が事前にアラームをセットしておき、設定したアラームが一定時間を過ぎても止められない場合、家族や近隣住民に通知されるというものです。近隣住民への通知は、最初に位置情報をGoogle Mapsで登録しておくことで、緯度経度をもとに割り出し、通知する仕組みになっているそうです。

実際に「yukiguni-go」を友達に追加してみると、

このようなメッセージが送られてきます。

例えば、「メニュー」から「設定の変更」に進むと、

このように、必要な情報に沿った項目と、その説明を読むことができます。

残念ながらこの部分から先の実装は間に合わなかったようですが、チームの課題、「雪かき中に発生する事故を防ぐ」に沿ったプロダクトになったのではないでしょうか。

◇フィードバック

林さん:

・雪かき中に亡くなったり、リスクを負ったりする高齢者の方が非常に多いと思われる中で、この課題への着目点は非常に素晴らしい。

・アーキテクチャも非常に良く考えられていると思う。

こういったアプリケーションでは安定化が重要なのかなと思うので、提供されているAPIやサービスなどをうまく組み合わせて使うというところも、開発の着目点として非常に素晴らしい。

・実際に使ってもらうことを意識すると、高齢者の方だと事前に設定するというのはなかなか難しいと思う。もう少し簡略化できたら。

・「自分は大丈夫ですよ」というのを家族や近隣の方に通知する、というのを簡易的にするだけでも良いと思う。

すべてをシステム化せず、事前登録をしなくとも、危険なリスクのあるシチュエーションのときに家族や近隣の方に通知がいくだけで、誰かが見に来てくれたり助けに来てくれたりすると思う。

松井さん:

・LINEを使っているのが良い。全て自作せず、使えるところは乗っかっていくのが上手いと思った。

・終了通知をすることに可能性を感じた。他のことにも使えて応用が可能。

既存のサービスの良いところは真似て、取り込んでいくといいのでは。

・課題の見つけ方から実際のアプローチまで、とても良いと思った。

LINEの利用率は60代で76.2%(引用:https://news.yahoo.co.jp/byline/fuwaraizo/20211006-00260938 )となっており、高齢者(65歳以上)にも広く普及しているサービスであることが伺えます。このような年代を問わず扱うことができるツールがあることで、課題を解決する選択肢が広がりますね!お二方のフィードバックでは、高齢者が使うことを想定したシステムにすること、開始・終了通知があると助かるような他の場面でも応用が出来そうなことなど、より実用性を意識したアドバイスをいただきました。フィードバックを生かした、実用可能な「yukiguni-go」ができるのを楽しみに待ちたいと思います!


2.課題1 / 「冬の道を安心・快適に歩くサポート型LINE BOT」/ Java Spice

◇発表

このチームに割り当てられた課題は、「1:冬の道の危険性」です。転倒のリスクを抑えること、道を歩く意欲を向上させることを目的として、転倒の予防から、路面の現状把握、転倒者数の把握を行うことができるLINE Chat Botの開発を行いました。

次の3つがその具体的な仕組みです。

砂箱の位置は、公開されている砂箱の位置情報データを用い、路面の状況については、道路状況のデータ(駐車する車が多いほど雪が押し固められ、転倒しやすくなる)や、気象予報に使用されるJsonを気象庁のホームページから取得し、交通量や気温、降水量をもとに予測されるシステムになっているそうです。

砂を撒くことの周知とユーザーの行動のベースとなる情報の通知、そして転倒者数を把握することで意識を向上し、予防となる砂撒きを促すという、予防と対策と事後のサイクルが転倒のリスクを抑止することに繋がっていて、ユーザーが増えるほど安心で快適な道の実現に繋がるプロダクトとなっていました。

◇フィードバック

松井さん:

・道民でも転倒してしまうことはあるので、良い課題だと思う。

砂箱の砂は撒いていいというのは知らなかった。インセンティブ(誘導)を付けて砂撒きを促してくれるのは良い。

・LINEの初期の登録者数が必要なので、最初のインセンティブが大事。

・ただ、砂撒きに関しては一部の自発的な人で十分に成り立つのかもしれない。

・ハッカソンが終わった後もぜひ継続して進めていってほしい。

林さん:

・歩行に限らず、車での通行も難しい場面があったので、道路状況の把握というアイデアは課題解決に役立つと思った。

・路面状況を実際に把握するのは非常に難しいと思う。衛星画像や道路のライブ映像を用いたり、オープンデータが更に出てきたりして解析が可能になっていけば、役立つツールになるはず。

・砂撒きがなかなか浸透していないことから、「つるつる路面では砂を撒きましょう!」という啓蒙でも十分良いと思った。

・例えば、砂を撒いてその写真をとったら1ポイント貰える、といったものでも面白そう。

・砂撒きをゴールとするアプリケーションならゴールは近いかも。

札幌市では交通量が多い交差点などに砂箱が設置されていますが、砂撒きをしていいことはあまり知られていないようです。撒いている人をあまり見かけないことや、人の目が気になるといった理由がありそうですが、まずは「積極的に砂を撒いていい」ということを知ってもらうことが第一歩になりそうです。お二方のコメントにあったように、ハッカソン後も継続して、安全で快適な道の実現に繋がるプロダクトを開発していってもらえると嬉しいです!

参加者の

・「これまでは自由なテーマの下でハッカソンに参加していたため、今回のように社会的なテーマで考えたことは大変新鮮で良い経験となった。」

・「これまでのハッカソンでもエンジニア、またはIT系の企業に勤めている方が講評をしてくださることはよくあったが、今回のズームインのようにテーマへのアプローチ方法や開発についての考え方を聞く機会はなかったので大変興味深いセクションであった。」

・「課題を決めてそれを解決するためのフレームワークもたくさん勉強できて良かった。」

おわりに

このハッカソンでは、上記の2チームが、LINEを用いたプロダクトを発表していました。1チーム目のトライアングルストラテジーでは、情報を発信する事が目的だった一方で、2チーム目のJava Spiceでは情報を収集することが主な目的となっており、同じサービスを用いても方向性の違うプロダクトになっていたことがひとつの見どころになっていたのではないでしょうか。開発期間が短かったこともあり、完成までは至らなかったものの、両チームとも着眼点に関して評価されていたことも印象的でした。

また、今回はハッカソン経験者や学生エンジニアの方だけでなく、初学者の方にも参加していただきました。チーム内で教えあうことで、技術的な面も課題解決のアプローチという点でも、多くの知見を得るきっかけになったはずです。お二方のフィードバックやチームで得た知見を活用しながら、ぜひ今後も開発を進めていってください!

本イベント、〈第1回 SAPPORO CITY HACK〉は、課題解決型ハッカソンプロジェクト〈HOKKAIDO CITY HACK PROJECT〉の第一弾として開催しました。初回となる今回は、テーマを「雪国特有の課題を解決」とし、除雪や路面凍結に関する課題解決に取り組んできました。今後も道内179市町村がそれぞれ抱える地域課題に向き合い、今回参加者のみなさんからいただいた感想や要望も参考にしながら、継続してハッカソンを開催していく予定です。今回ご参加いただいた方も、参加を逃した方も、次回以降のハッカソンや未完Projectのイベントでお会いしましょう!