札幌市が抱える雪課題を深堀り~「第1回 SAPPORO CITY HACK 連携取材企画」

未完Projectが2022年3月12日から22日まで開催する、『第1回 SAPPORO CITY HACK~雪国特有の課題を解決』では、実際に札幌市が抱えている雪課題をもとに5つの課題を挙げ、その解決に向けたハッカソンに取り組んでもらうことになっています。

実際の課題は以下の5つです。

  1. 冬の道の危険性
  2. 家の周りにたまる雪の処理 / 除雪の効率化
  3. 除雪ボランティアの高齢化
  4. 除雪作業従事者の減少
  5. 雪対策に関する効果的な広報の実現

今回課題を設定するにあたり、実際に札幌市建設局雪対策室の方へ取材を行い、札幌市が抱えている雪課題と現状どういった施策を取っているか、どういった問題の解決が望まれているかをヒアリング・調査を行いました。

そちらの取材内容をもとに、1〜5の課題が具体的にはどんな問題なのか、どういった問題の解決が望まれているかを深堀りしていきます。

その前に、まずは「札幌市冬のみちづくりプラン2018」を読もう。

今回の5つの課題は札幌市が制定している「札幌市冬のみちづくりプラン2018」をもとに未完Projectの方で選定した課題です。この5つの課題がどんな問題を抱えているか、どんな施策がなされている・計画されているか、そもそも札幌市の除排雪がどうなっているのか、そのほとんど全てがこの「札幌市冬のみちづくりプラン2018」に記載されています。

https://www.city.sapporo.jp/kensetsu/yuki/keikaku/fuyumichiplan.html

こちらに記載されているのですが、82ページもあると読むのが大変!ということで、それぞれの課題に合わせて取材内容を踏まえながら抜粋した内容を記載します。

そもそも、札幌の除排雪の仕組みって?

札幌市が行っている除排雪は以下の流れになっています。

  1. 除雪予算が割り当てられる
  2. 札幌市を23地区に分割して、それぞれを受注した除排雪業者が行う。
  3. 除雪は幹線道路及び生活道路、排雪は幹線道路及び一部の生活道路(通学路)で実施

生活道路の排雪は「パートナーシップ排雪制度」を利用した形や、民間サービスを利用した形が主となっています。

パートナーシップ排雪制度とは?

生活道路の排雪は基本的には札幌市では行っていないということから、そこを補完するために行われている取り組みです。生活道路の排雪ニーズが高いことから、地域側から申請/希望があれば、地域と札幌市が協働で(地域と札幌市で半分ずつお金を出し合って)排雪を行います。

課題①冬の道の危険性について

現状冬の道の危険性については、以下のような問題・課題が挙げられています。

①毎年 800人〜1000人が転倒が原因で救急車で運ばれています。

対策:

市内に約2,700箇所砂箱があり、砂を滑り止めの代わりとして撒くこと。

誰が砂をまいてもいいことになっており、市はその広報に努めているが、まだまだ手を出しづらいと感じている人も多い模様です。

②冬の路面状況は目まぐるしく変化し、ツルツル路面が発生するとなれば、広範囲で一斉に発生することが多いことから、札幌市が行う作業だけではすべてをカバーすることが困難な状況です。

③除雪の繰り返しで積みあがった雪山による視界不良(見通しの悪さ)

課題②家の周りにたまる雪の処理 / 除雪の効率化

敷地内の雪や市の除雪車で寄せた出入口前の雪の処理は、各家庭で行う必要があります。

そういった中で、以下のような課題が挙げられています。

①雪を車道に捨ててしまうルール違反が発生している。

敷地内の雪は敷地内でためておくこと、市の除雪で残された雪は歩道の端に寄せるのがルールとなっています。ただ、雪は増え続けるため、雪を置く場所が必要になります。

そこで、一部の公園では、町内会と札幌市との間で「覚書」を交わし、ルールを守ることで雪置き場として利用できることになっています。

課題③除雪ボランティアの高齢化

①ボランティアの高齢化

現在のボランティア活動は地域の方が主体で行われていることが多く、高齢化が進んでいます。今後も高齢化が続く中では、ボランティアのニーズはさらに高まると思いますが、それらに対応していくためには、ボランティアを担う人材の確保や開拓が重要になります。

②除雪ボランティアだけでなく、一人暮らしの高齢者が増える中、雪による建物倒壊等安全確保のためにサポートできる体制作りが進められています。

課題④除雪作業従事者の減少

除雪作業従事者は減少を続けているなか、以下のような課題があげられ、それぞれに対策が取られています。

①除雪機械の多くは2人乗りで、運転手のほかに助手による安全確認を行い作業していますが、カメラやセンサなどの安全補助装置を設置し助手の役目を代替することで、運転手1人でも安全に作業が行えるよう、対策を進めているそうです。

②建設業従事者の数が減りつづけ、技術継承が難しくなっています。

対策として、現状の除雪ルートの効率化や排雪現場から最適な搬入先を選定するシステムの開発が行われているそうです。

また、除雪機械に設置したGPS端末を活用して取得した位置情報を基に、必要な報告書など今まで紙媒体で作成していた書類をデータ化するなどデジタルシフトも順次進めているそうです。

課題⑤雪対策に関する効果的な広報の実現

①札幌市の除雪のしくみがまだ完全に理解されていない点。

苦情・問い合わせが例年2万件程度(今年は記録的な大雪によりすでに6万件以上)寄せられているが、現行の制度を理解していないことによる苦情や問い合わせが依然として多い状態とのことです。

多くの情報が札幌市のホームページや冬のくらしガイドなどに記載されていますが、そういった情報の更なる浸透が必要かもしれません。

②除雪ボランティアや除雪従事者の不足に対しても、より効果的な広報が望まれる状況です。

行政の視点で特に課題として捉えている点

さらに、札幌市の方に特に課題と感じている点を伺ったところ、以下のような回答をいただきました。

「札幌市として1番懸念しているのは、『札幌市冬のみちづくりプラン2018』で目指すべき将来として掲げている持続可能性です。現在は事業者の皆様の努力などにより、人員数及び機械台数共にこれまでの体制を確保しているが、今後高齢化が進み、逆に少子化の影響で生産年齢人口が減っていくため、除雪の担い手が将来的に10年で2割、20年後には4割くらい減ってしまうという推計をしています。

このまま何も手立てをしないと、十分な除排雪ができなくなるという点が1番懸念している点です。

ICTを活用した作業の効率化、労働環境改善などもそうですが、少しでも若い人が除雪に従事していただくためのイメージアップ・魅力向上等も必要になってくると考えています。」

最後に

あらためて、取材の内容を通して5つの課題を深堀りしていきました。取材担当した担当者としては、自分の知らなかった部分が多く、これを読んでくださっている方もその気持ちは同じではないのかと考えています。

『第1回 SAPPORO CITY HACK〜雪国特有の課題を解決』は現在開催中で、各チームごとで課題に向き合い、課題の解決へ繋がるようなプロダクトを開発しています。イベント終了後に、今回のハッカソンで開発されたプロダクトをこちらの未完Mediaで紹介する予定です。お楽しみに!

『HOKKAIDO CITY HACK PROJECT』では、道内の地域課題に基づくハッカソンを今後も開催していく予定です。今回の『第1回 SAPPORO CITY HACK〜雪国特有の課題を解決』に参加されなかった方も、ぜひ次回以降のハッカソンやイベントにご参加ください!


参考:札幌市が公開している雪に関するデータ

観測データダウンロード

https://www.city.sapporo.jp/kensetsu/yuki/weather-data.html

除雪情報(厚別区)

http://www2.city.sapporo.jp/cgi-bin/kensetsu/yuki/jyosetsu.cgi?pos=5

明日朝の雪かき指数

https://www.city.sapporo.jp/kensetsu/yuki/yukikaki.html

大雪時などの緊急除排雪情報

https://www.city.sapporo.jp/kensetsu/yuki/kinkyuu.html